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過去の演奏会

ヴェルディ/歌劇 「椿姫」

Giuseppe Fortunino Francesco Verdi (1813-1901)
La Traviata

あらすじ

~登場人物~
ヴィオレッタ・ヴァレリー パリの高級娼婦
アルフレード・ジェルモン 南仏プロヴァンス地方旧家出身の青年
ジョルジュ・ジェルモン アルフレードの父
フローラ ヴィオレッタの友人
アンニーナ ヴィオレッタの召使い
ガストン子爵 ヴィオレッタとアルフレードの共通の友人
ドゥフォール男爵 ヴィオレッタのパトロン
ドビニー侯爵 フローラのパトロン
医師グランヴィル ヴィオレッタの医者
~舞台設定~

1850年頃のパリとその郊外で、わずか半年という短い間に起こった恋の物語である。

第1幕は8月のパリ。ヴィオレッタとフローラの友人の紳士淑女(前半の合唱)の集まったヴィオレッタ邸の客間。第2幕第1場は翌年の1月。2人が暮らすパリ郊外の田舎。同幕第2場は、すぐその後のパリ。闘牛士やジプシー女に扮した人々(後半の合唱)が集まるフローラ邸の仮装舞踏会。第3幕は1ヵ月後の2月のパリ。すべてを失ったヴィオレッタの寝室。

La traviata = 道を踏み外した女~

日本で一般的に「椿姫」と呼ばれるこのオペラの原作は、デュマ・フィスの「椿を持つ女」である。作曲者ヴェルディがピアーヴェに台本制作を依頼し、そのとき「La traviata=道を踏み外した女」となった。原作に登場する美しい高級娼婦マルグリット・ゴティエは、ヴィオレッタ・ヴァレリー、その女の虜となるアルマン・デュヴァルが、アルフレード・ジェルモンである。

主役ヴィオレッタは高級娼婦であるが、当時の娼婦とは現代の人々が抱く娼婦のイメージと異なるものである。パリの高級娼婦たちは、男性に伴って社交界へ出ても恥ずかしくないように、教養や芸術的才能にも長け、気品と美貌を兼ね備えていた。ヴィオレッタも、そんな女性だったのだ。

流麗なメロディーから、ヴィオレッタがいかに美しく女性的であるかがわかるが、彼女は同時に社会秩序と戦う勇敢な女性でもあった。金を得るために身を売っていた彼女は、自分の財産を売リ払ってまで恋を実現しようと試みる。しかし社会秩序の鑑ともいうべきアルフレードの父ジェルモンはこれを許さない。最後には、自分が「道を踏み外した女」であるという悲しい自覚から、ヴィオレッタは愛するもののために自らの想いを犠牲にするのである。

「La traviata」は、ヴェルディの円熟期に作曲された。妻マルゲリータと2人の子どもを病気で亡くした彼を支えたのは、その後内縁の妻として寄り添ったジュゼッピーナである。しかしこの女性は長い間亡き妻の父から受け入れられず、辛い思いをしていた。そんな2人は「椿を持つ女」のマルグリットとアルマンを、自分達と重ねたに違いない。また原作者デュマも、マリー・デュプレシという高級娼婦を愛し、病で血を吐くマリーに、無茶な生活をやめるようにと真剣に忠告したことがあった。23歳の若さで亡くなったマリー・デュプレシは、椿の花をたいへん好んだようである。彼女に対する彼の願う姿が、「椿を持つ女」のマルグリットに反映されたと考えられる。

今日でもこのオペラが多くの人々に愛されているのは、2人の芸術家の想いが作り出した作品であることと同時に、デュマの原作が、ヴェルディの音楽の力を得て、より劇的な作品となり、椿姫という死をも超越した美しいヒロイン像を作り上げたからである。

(アミーチ デル ベルカント メンバー)

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