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過去の演奏会

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調 作品60

Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Sinfonie Nr.4 in B-Dur Op.60
第1楽章 アダージョ - アレグロ・ヴィヴァーチェ / Ⅰ. Adagio - Allegro vivace
第2楽章 アダージョ / Ⅱ. Adagio
第3楽章 アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ -ウン・ポコ・メノ・アレグロ / Ⅲ. Allegro molto e vivace – Un poco meno allegro
第4楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ / Ⅳ. Allegro ma non troppo

ベートーヴェンは1790年代の後半から耳の不調に悩まされるようになり、音楽家としての将来を悲観し自殺まで考えるほどになりました。しかし、自分の才能に強い自信をもっていたベートーヴェンは、自らに課された芸術的使命を果たすのだという強い決意のもと、その苦悩を克服していきます。1802年に書かれた「ハイリゲンシュタットの遺書」で過去の苦悩を吹っ切り、その後約10年に渡り「傑作の森」と称される創作の黄金期を迎えます。1804年には代表作の1つである交響曲第3番「英雄」を完成させ、その後すぐに次の交響曲の作曲に取り掛かりました。

その交響曲は、実は今日演奏する変ロ長調の第4番ではなく、ハ短調の交響曲(第5番「運命」)でした。ベートーヴェンはいったん書き始めた第5番の作曲を中断して、第4番を比較的短期間で一気に書き上げたのでした。

この時期は、ベートーヴェンとヨゼフィーネ・フォン・ダイム伯爵未亡人との恋愛が高潮していた時期でした。ヨゼフィーネは1799年、ウィーンに滞在してベートーヴェンからピアノのレッスンを受けました。このウィーン滞在中にダイム伯爵に見初められて結婚しますが、ダイム伯爵は1804年に急死してしまいます。ヨゼフィーネは音楽家として尊敬し慕っていたベートーヴェンを頼ったことがきっかけとなり、二人の関係は恋愛へと発展することになりました。

 私生活の充実した中で書かれた第4番ですが、初演当時の評価は低いものでした。前作の交響曲第3番「英雄」は、英雄の闘争、死と再生という極めてロマン主義的なドラマ性をもち、楽曲規模や編成などあらゆる面でそれまでの交響曲から飛躍的な発展を遂げた作品でした。この発展を目の当たりにした当時の聴衆にとって、同様のインパクトが第4番には感じられなかったことが、低い評価が与えられたことの一因であると考えられます。また、当時の聴衆はすでに交響曲にある種のドラマ性を求めていたことがうかがえます。第4番は、「英雄」のようなドラマ性はないものの、決して古典へ回帰した作品ではなく、作曲技法や、新たな楽器の用法などにおいて着実な進歩がみられます。これらの充実した内容とともに、恋愛が高潮していた当時のベートーヴェンの心情を反映したかのような、明るい喜びに満ちた曲調が魅力の作品です。

第1楽章:アダージョ - アレグロ・ヴィヴァーチェ

最弱音ppによる神秘的な序奏で開始されます。弦楽器の序奏主題(ソ♭-ミ♭-ファ-レ♭)は、「運命」動機の音進行(ソ-ミ♭-ファ-レ)とよく似ており、同時期に構想された作品であることがうかがえます。序奏の最後では抑えきれなくなったエネルギーを解放するかのように爆発的に盛り上がり、快活な第1主題が登場します。ファゴットの先導により木管楽器に現れる第2主題は、序奏主題をもとにしたものです。

第2楽章:アダージョ

第2ヴァイオリンによる特徴的なリズムの中、柔和でゆったりとした第1主題がうたわれます。第2主題は、ロマンティックな旋律がクラリネットに現れます。終盤の、弱音によるティンパニ・ソロも印象的です。

第3楽章:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ - ウン・ポコ・メノ・アレグロ

元気の良い跳躍音型とヘミオラのリズムによるスケルツォと、木管楽器とホルンを中心とした牧歌的な雰囲気のトリオによる楽章です。

第4楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ

細かく速いパッセージによる第1主題が、まずヴァイオリンに現れます。第2主題はオーボエとフルートによるゆったりした旋律ですが、細かい動きは形を変えながら楽章をずっと貫いています。最後は、第1主題が引き伸ばされてゆっくりと現れ、畳み掛けるような低弦とファゴットの下降音型のあとトゥッティで和音を叩き込み、全曲を締めくくります。

(Y.H)

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