小山清茂は、オーケストラや吹奏楽団から委嘱を受け、「鄙歌」と題した作品を5つ残しています(第1~4番が管弦楽、第5番は吹奏楽)。鄙歌とは、田舎の歌というような意味で、各地の民謡や民俗芸能を素材にしたシリーズとなっています。本日演奏する第2番は、1978年に日本フィルハーモニー交響楽団が日本の作曲家に委嘱する「日本フィル・シリーズ」の第27作として書かれ、同年初演されました。小山清茂の管弦楽曲としては管楽器の編成が最大であるほか、和太鼓をはじめとする日本の打楽器を多用していることが特筆されます。
この作品のスコアには、次のような作曲者自身による説明が付されています。
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第1曲「和讃」は、冒頭にヴィオラとチェロにより朗詠される主題が、伴奏を変化させながら弦楽器によって4回繰り返されます。深い情感が印象的です。
第2曲「たまほがい」は、邦楽のオルゴール、土鈴、グロッケン、弦楽器を中心としたユーモラスなオスティナートの伴奏に乗り、木管楽器が穏やかな主題を奏でます。
小山清茂は、アイヌ音楽の持つ野性味と素朴さに惹かれていたようで、アイヌ民謡に基づく作品をいくつか残しています。第3曲「ウポポ」は、1963年に書かれた「室内管弦楽のためのアイヌの幻想」を下敷きにしています(参考までに、1962年に書かれた和楽器四重奏曲第1番に「アイヌの幻想」と類似する主題が使われている他、1964年に書かれた「弦楽のためのアイヌの唄」も「アイヌの幻想」と共通するリズムを土台にしています。)。極めてエネルギッシュな曲で、ティンパニと桶胴太鼓の間で応酬される野性的なリズムは一度聴いたら忘れられません。中間部では、弦楽器のピチカートなどにより、アイヌの民族楽器である五弦琴「トンコリ」の響きが模倣されます。
第4曲「豊年踊り」は、愛媛県に伝わる伝統芸能「伊予萬歳」に基づきます。いかにも日本的な締太鼓のリズムに誘われて様々な管楽器が次々とソロを奏で、そこにオーケストラ全体が合いの手を入れていく楽しい曲です。最後は金管楽器の激しいフラッタータンギングとティンパニ、櫓太鼓の強奏で曲を閉じます。
(T.M)