マリピエロは1882年、イタリアのヴェネツィアに生まれました。祖父はオペラ作曲家、父はピアニストという音楽一家で幼少の頃から音楽教育を受けますが、両親の離婚によって各地を転々とすることとなり、苦労して作曲を学んだといわれています。独学を強いられた時期には、ルネサンスやバロック時代のイタリアの作曲家であるモンテヴェルディやフレスコバルディらのスコアを写譜し、その作曲技法を習得しました。
この経験からイタリア古楽に傾倒し、モンテヴェルディの全作品とヴィヴァルディの協奏曲の校訂を行った研究者としても知られています。マリピエロの作品の多くは、ロマン派音楽の伝統にとらわれない自由な形式のもと、古楽のエッセンスを感じる旋律と、ドビュッシーに影響を受けた色彩豊かな和声が特徴で、イタリアにおける新古典主義音楽を代表する作曲家として評価されています。
「4つのインヴェンション」は1933年、「Acciaio(鋼鉄)」というイタリアの製鉄所を舞台とした映画のために作曲されました。この曲は農村での生活を描いた場面に用いられる予定でしたが、監督に気に入られなかったため、実際の映画中には使用されなかったそうです。
冒頭は木管楽器を中心とした軽やかな音楽。中間部はせわしなく不安げな雰囲気ですが、最後は冒頭の軽やかな旋律が戻ってきます。
素朴な旋律が木管楽器と金管楽器にそれぞれ現れます。その後、ピアノによってタタタタタンというリズムが突然現れて曲調が一変し、そのリズムに支配されていきます。
のどかな田園風景を思わせる旋律が印象的な曲です。後半はちょっと緊張感のある曲調に変化した後、金管楽器を中心としたファンファーレで閉じられます。
フェストーソとは「祭りのように」という意味で、祝祭的で華やかなテーマが現れます。しかしすぐにピアノと打楽器によって全く異なるリズムが鳴らされ、フルートが旋律を奏でます。どこか日本のお祭りのようにも聞こえる旋律です。
なお、この作品は本日の演奏が日本初演となります。レンタル楽譜の日本代理店への確認では、取扱いを始めた1997年以降は演奏された記録はありませんでした。また、文献やインターネット等による検索でも演奏された情報が見当たらないことから、日本初演であると判断しました。歴史的な機会を、どうぞお楽しみ下さい。
(Y.H)