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ロベルト・アレクサンダー・シューマン/交響曲第4番 ニ短調 Op.120(1841年初稿版)

Robert Alexander Schumann (1810-1856)
Symphonie Nr.4 in d-moll Op.120 (Erstfassung 1841)
第1楽章 アンダンテ・コン・モート - アレグロ・ディ・モルト /Andante con moto - Allegro di molto
第2楽章 ロマンツァ:アンダンテ /Romanza: Andante
第3楽章 スケルツォ:プレスト /Scherzo: Presto
第4楽章 ラルゴ - フィナーレ:アレグロ・ヴィヴァーチェ /Largo - Finale: Allegro vivace

ドイツ・ロマン派を代表する作曲家であるシューマンは、生涯に4つの交響曲を完成させました。交響曲第4番は1841年、交響曲第1番「春」に続いて作曲された2作目の交響曲です。ピアニストでもあったシューマンはピアノ曲を中心に作曲を行っていましたが、この年は2つの交響曲を立て続けに作曲したことから「交響曲の年」と呼ばれています。シューマンには他にも「歌曲の年」や「室内楽の年」と呼ばれる年があり、特定のジャンルに集中して取り組むというのがシューマンの作曲活動の特徴です。

わずか1ヶ月ほどの期間で作曲された交響曲第1番「春」は、メンデルスゾーンの指揮によって初演され、成功を収めました。これを受けて2作目の交響曲の作曲に取り掛かり、こちらもわずか3ヶ月ほどで完成し、9月13日に妻クララの22歳の誕生日プレゼントとして贈られました。その後12月に初演されますが、この交響曲の評判は芳しくなく、出版社にも出版を断られてしまいました。これは決して交響曲第1番より内容が劣っていたということではなく、第1番の初演を成功させたメンデルスゾーンが指揮をとらなかったことと、その演奏会の中に当時を代表するピアニストであるクララとリストが連弾で共演するという一大イベントがあったことで、交響曲の印象が薄くなってしまったためではないかと考えられています。

出版が見送られたことで、この交響曲はしばらく放置されることとなりますが、作曲から10年後の1851年、代表作となる交響曲第3番「ライン」を完成させたシューマンは、突如2作目の交響曲の改訂を始めます。改訂稿の初演は1853年、シューマン自身の指揮によって成功を収め、本来は2作目の交響曲でしたが、「第4番」としてようやく出版が叶いました。

現在、交響曲第4番として一般的に演奏されるのは、改訂稿によるものです。改訂稿では楽曲構成が練り上げられたほか、複数の楽器をユニゾンで重ね合わせるなど、オーケストレーションは重厚なものとなりました。しかしその反面、楽器を重ね合わせたことで響きは重苦しくなり、くぐもって鳴りにくいことが問題点として指摘されることがあります。そのため、シューマンの交響曲では、指揮者がオーケストレーションを修正することが一般的に行われていました。最も有名なのはマーラーによる修正で、この楽譜は「マーラー版」として出版もされています。

近年では、この問題点もシューマンの個性と捉え、オリジナルを尊重した演奏が主流となっています。その中で、交響曲第4番では、オーケストレーションが改訂される前の「初稿版」による演奏も見直されています。かつては、ブラームスも初稿の優位性を主張してこれを出版しようとし、夫の遺志を尊重したクララと対立したことが知られています。初稿版はシンプルなオーケストレーションによって各声部が明瞭に聞こえ、透明感のある響きが魅力です。本日は、この初稿版による演奏をお聴き頂きます。

交響曲第4番は4つの楽章からなりますが、楽章間にはほとんど間が置かれず、特に第3楽章と第4楽章は切れ目なく連続して演奏されるように書かれています。また、第1楽章の主題はその後の楽章で繰り返し用いられるため、あたかも単一楽章の交響曲のように感じられます。第2楽章の冒頭は、オーボエと半プルトのチェロによって哀愁漂う旋律がうたわれます。シューマンは当初、この旋律の伴奏にギターを用いようとしましたが、のちに撤回されています。中間部はヴァイオリン・ソロが3連符の流麗な旋律をうたい、この旋律はそのまま第3楽章スケルツォの中間部にも用いられます。第4楽章の序奏では金管楽器が中心となって壮大な響きを構築し、速度を速めて主部への見事な移行をみせます。この序奏、主部ともに第1楽章の素材によるものであり、全体としての統一性をより高めています。シューマンは、改訂稿では「交響的幻想曲」と名付けようとしたほどで、従来の枠組みには収まらない、シューマンの独創性が感じられる交響曲です。

(Y.H)

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