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過去の演奏会

ニコス・スカルコッタス/6つのギリシャ舞曲(36のギリシャ舞曲 AK.11 より)

Nikos Skalkottas (1904-1949)
6 Greek Dances
1. ペロポネソス舞曲 [第2集/第12曲] /Peloponnissiakos [Series II/12]
2. アルカディア舞曲[第3集/第10曲] /Arcadikos [Series III/10]
3. テッサリア舞曲[第1集/第12曲] /Thessalikos [Series I/12]
4. 黒い頭巾[第2集/第6曲] /Mavro Yemeni [Series II/6]
5. ザロンゴの踊り[第1集/第9曲] /O Choros Tou Zalongou [Series I/9]
6. ヴラフ人の踊り[第2集/第5曲] /Vlachikos [Series II/5]

スカルコッタスは、1904年に生まれたギリシャの作曲家です。幼い頃からヴァイオリンを学び、アテネ音楽院を金賞で卒業した後、ドイツのベルリンへ留学しました。しかし、彼はここでヴァイオリニストから作曲家へと転向します。作曲をアルノルト・シェーンベルクらに師事した後、故郷ギリシャへ帰国。シェーンベルクといえば無調音楽の追求から12音技法を確立した作曲家ですが、スカルコッタスもこの技法を駆使し、ギリシャで前衛的な作品を次々と発表していきます。しかし、その難解な音楽はなかなか周囲の理解を得ることができませんでした。そこで彼は無調音楽と並行して、民族主義的な調性音楽も作曲しました。

彼の代表作である「36のギリシャ舞曲」は後者の作品にあたり、ギリシャの民族舞曲に基づいた管弦楽曲として作曲されました。1931年から1936年にかけて段階的に作曲され、それぞれ12曲からなる3つの曲集にまとめられました。その後、亡くなる1949年まで、ライフワーク的に様々な編成への編曲や改訂が行われました。この作品は彼の生前に出版されることはなく、1965年にUniversal Editionから、抜粋して独自に並べ替えられた2巻のギリシャ舞曲集(第1巻:5曲、第2巻:6曲)として出版されました。残りの曲は、1990年代にMargun Music Editionから3つの組曲に分けて出版されています。

本日演奏する「6つのギリシャ舞曲」は、Universal Editionの第2巻です。このレンタル楽譜は記録のある範囲では国内でレンタルされた実績がなく、また文献やインターネット等による検索でも演奏された情報が見当たらないことなどを総合的に勘案し、日本初演であると判断しました。

1. ペロポネソス舞曲[第2集/第12曲]

ホルンとヴァイオリンによる強烈なオスティナートで開始され、すぐにオーボエとクラリネットによる民謡のテーマが現れます。このテーマの後にはノスタルジックな別のフレーズが挿入され、3度目にテーマが回帰したところで曲が閉じられます。

2. アルカディア舞曲[第3集/第10曲]

この曲のテーマは、スカルコッタス自身の創作によるものです。穏やかな曲調は牧人の理想郷「アルカディア」を連想させることから、このタイトルが名付けられました。ヴィオラとファゴットによって始まる牧歌的な旋律と、金管楽器による祝祭的な旋律で構成されています。

3. テッサリア舞曲[第1集/第12曲]

この曲のテーマもスカルコッタスの創作です。ティンパニのアルペジオに導かれ、トランペットによる輝かしいテーマが登場します。変拍子を含み、1小節ごと目まぐるしく拍子が変わります。どう踊ったらいいのかまるで分かりませんが、ストラヴィンスキーの影響を感じさせる舞曲です。

4. 黒い頭巾[第2集/第6曲]

同名の民謡から旋律が取られた曲です。元となった民謡は、ギリシャではポピュラーな「カラマタの踊り」という7拍子の民族舞踊に基づいたもので、8分の7拍子による「タタタ・タン・タン(3+2+2)」という独特のリズムで全曲が支配されています。民謡の旋律はスカルコッタスによって3つの要素に分割されていて、楽器の組み合わせの変化や転調によって展開されていきます。

5. ザロンゴの踊り[第1集/第9曲]

エピロス地方の歴史的な事件に基づく民謡「ザロンゴの踊り」をテーマにした曲です。1803年、この地方に住んでいたスーリ族はトルコ軍による侵略を受け敗退し、村の女性たちはザロンゴ山の断崖に追い詰められてしまいます。トルコ軍に対する最後の抵抗を示すため、女性たちは自決することを決めました。最後にみんなで民族舞踊を踊ってから、断崖の下へ身を投げたと伝えられています。この事件の慰霊のために作られたのが民謡「ザロンゴの踊り」で、スカルコッタスはここから旋律を引用しています。冒頭、ホルンに現れるのがその民謡旋律です。第4曲と同じく「カラマタの踊り」による7拍子のリズムですが、この曲では4分の7拍子とすることで重苦しさを表現しています。トルコ軍の脅威を思わせる金管楽器の咆哮の後は速い舞曲となり、事件の緊迫した雰囲気を感じさせます。

6. ヴラフ人の踊り[第2集/第5曲]

ヴラフ人とはギリシャ北部周辺に住むラテン系民族です。この曲はヴラフ人の民謡と直接的な関連は無いようですが、いかにもラテン系民族らしい情熱的で威勢の良い舞曲です。ピッコロ、フルート、ヴァイオリンによる民謡調のテーマとともに、内声部ではリズミックな短いモティーフが執拗に繰り返されます。後半はこの短いモティーフに完全に支配され、熱狂的に幕を閉じます。

(Y.H)

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