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過去の演奏会

チャイコフスキー/交響曲第1番 ト短調 作品13「冬の日の幻想」

Pyotr Ilyich Tchaikovsky (1840-1893)
Symphony No.1 in G minor, Op.13 “Winter Daydreams”
Ⅰ “Daydreams on a Winter Journey” Allegro tranquillo
Ⅱ “Land of Desolation, Land of Mists” Adagio cantabile ma non tanto
Ⅲ Scherzo. Allegro scherzando giocoso
Ⅳ Finale. Andante lugubre-Allegro maestoso

チャイコフスキーは19世紀ロシアを代表する作曲家の一人で、クラシックのあらゆるジャンルに傑作を残していますが、とりわけ交響曲やバレエ音楽が広く知られています。彼が生涯で完成させた交響曲は番号なしの「マンフレッド交響曲」を含め7曲ですが、本日演奏する第1番は1866年、26歳の時に作曲された最初の交響曲です。

チャイコフスキーは両親の意向に従って10歳の時に法律専門学校へ入学し、卒業後は法務省に勤務していました。しかし、幼い頃から音楽の才能を示していたチャイコフスキーは音楽家になる夢を諦めきれず、法務省を4年で退職。サンクトペテルブルクの音楽学校で学んだのち、モスクワ音楽院の講師になりました。講師として赴任する前の準備期間中に、第1交響曲は作曲されました。彼は自身初の交響曲となるこの作品を作曲の師であるアントン・ルビンシテインらに見せますが、酷評を受けてしまいます。

他の多くの作曲家もそうであったように、チャイコフスキーにとっても最初の交響曲は大きな産みの苦しみを伴うものとなりました。師の助言を受けて1868年にかけて改訂を施し(第2稿)、ようやく全楽章通しての初演を迎えます。初演は成功、特に第2楽章が賞賛され、チャイコフスキーはこの交響曲に自信をもちます。現在一般的に演奏される第3稿が完成したのは1874年で、作曲着手から実に8年もの歳月を費やすこととなりました。彼がこれほどまでに苦労した作品は他にないとされ、この交響曲への深い愛着や思い入れが感じられます。

第1交響曲の楽章構成は、ソナタ形式-ロンド形式-スケルツォ-ソナタ形式であり、一見するとベートーヴェン以降の典型的な交響曲形式です。ただし第3楽章のトリオではチャイコフスキーお得意のワルツが用いられており、既に彼ならではの個性が光るものとなっています。また、第4楽章冒頭のファゴット、クラリネットの低音による開始は第5、第6交響曲を連想させますし、ロシア民謡を引用する発想は第4交響曲の終楽章にも取り入れられています。チャイコフスキーといえば後期3大交響曲が有名ですが、この第1番は後期作品への道筋を明確に感じとることができる、大変興味深い作品です。

第1楽章:「冬の旅の幻想」

弦楽器によるトレモロと、フルートとファゴットによる第1主題により、冒頭から冬の風景を連想させる曲想です。第2主題はクラリネットに現れます。なお、全曲の副題「冬の日の幻想」は、この第1楽章の副題によるものです。

第2楽章:「陰気な土地、霧の土地」

この楽章は、チャイコフスキーがサンクトペテルブルク近郊のラドガ湖を訪れた際の印象によるものといわれています。この土地にはロシア史上最大の暴君といわれる皇帝イワン4世による虐殺の歴史が残っており、「陰気な土地」という副題はその印象からとられたものと思われます。
 初演時に好評を博したのがこの楽章で、印象的な2つの主題が交互にうたわれます。1つめの主題はまずオーボエでうたわれ、その後すぐにヴィオラでうたわれるのが2つめの主題です。1つめの主題はチェロが受け継ぎ、その後のホルンによってこの楽章のクライマックスが築かれます。

第3楽章:スケルツォ

ヴァイオリンと木管楽器による幻想的なスケルツォと、優雅で伸びやかなワルツで構成された楽章です。ティンパニ・ソロからのコーダではワルツの旋律が短調で現れ、楽章が閉じられます。

第4楽章:フィナーレ

ロシア民謡「咲け、小さな花」を主題にした楽章です。この民謡主題は冒頭にファゴット、クラリネットによって断片的に示されたのち、ヴァイオリンによりうたわれます。別主題による対位法的な展開を経て、コーダでは全管弦楽による民謡主題で圧倒的な頂点をつくり、さらに勢いを増してフィナーレを迎えます。

(Y.H)

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