バルトークは1881年、ハンガリー南部のナジセントミクローシュ(現在はルーマニア領)に生まれました。当時のハンガリーはハプスブルク家により統治された多民族国家でした。ハンガリー独立の気運が高まる中で、音楽家の間ではハンガリー独自の音楽=民謡の研究が進められます。バルトークは友人で作曲家のコダーイとともに、1906年から農村で民謡の採集を開始しました。採集範囲はハンガリー、ルーマニア内にとどまらずアフリカのアルジェリアにまで及び、30年にわたって採集した民謡の数はなんと2万点に達します。当時発明されたばかりの蓄音機を使って1曲ずつ録音した後、分析・分類を行なって体系的にまとめあげました。単純計算すると1日に2曲この作業をこなしていったことになりますから、とても信じられない仕事量です。
ルーマニア民俗舞曲は、採集したルーマニア民謡を元にピアノ曲として作曲されました。本日演奏する管弦楽版はバルトーク本人による編曲です。次の7つの小曲からなり、全てアタッカで立て続けに演奏されます。
棒で動物を追い立てる動作が結びついた舞曲。
飾り帯のついた民族衣装による舞曲。
ワイン造りでぶどうを足で潰すときの舞曲。
トランシルヴァニア地方のブチュム村で採集された舞曲。
激しく、野性味のあるポルカ。
別々の地方で採集された2つの速い舞曲。後半は更に速さを増し、その勢いのまま熱狂的に締めくくられる。
(Y.H)