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過去の演奏会

A.アルチュニアン/トランペット協奏曲

Alexander Grigorevich Arutiunian (1920-2012)
Trumpet Concerto in A-flat major

アルチュニアンは1920年、アルメニアの首都エレヴァンに生まれました。アルメニアは黒海とカスピ海に挟まれた内陸国で、ユーラシア大陸の東西を結ぶ要所であったために、古くからオスマン帝国やペルシャ、ロシアなどの支配を受け続けてきました。ゆえにアルメニア人は、強烈な民族意識や伝統文化に対する誇りをもっていると言われています。アルチュニアンも例外ではなく、アルメニア民謡の旋律・リズムを取り入れた作品によって自身の民族意識を表現しています。

このトランペット協奏曲は、1950年の第3回ソヴィエト連邦作曲家同盟総会のために作曲されました。この協奏曲の主題は1943年に書きとめられていたものですが、この曲が誕生した背景には次のような物語があります。

アルチュニアンは少年時代、夏休みを過ごしていた避暑地の貸し別荘で、毎日トランペットを練習しているツォラク・バルタサリアンと出会いました。当時バルタサリアンはモスクワ音楽院の学生でしたが、卒業後に歌劇場のトランペット奏者としてアルチュニアンの住むエレヴァンへ赴任したことで両者の親交はその後も続くこととなりました。アルチュニアンが1943年に作曲した主題をバルタサリアンはとても気に入り、この主題でトランペット協奏曲を作曲するよう強く勧めました。しかしバルタサリアンはこの協奏曲の完成をみることなくその年に兵役について、戦死してしまいます。友人の死の悲しみの中でこの主題は温められ、1950年にトランペット協奏曲として完成しました。

この協奏曲は、ソナタ形式の各部分にエピソードが挿入されたユニークな構成であり、全て続けて単一楽章として演奏されます。独奏トランペットによる力強い序奏の後、颯爽とした独奏トランペットの主題が現れます。この主題による提示部—展開部—再現部の各間に、クラリネットに始まるゆったりしたメロディのエピソードⅠ、ミュート(弱音器)をつけた独奏トランペットによるエピソードⅡが挿入されます。終結部のカデンツァは、トランペットの名手ティモフェイ・ドクシツェルにより後から付けられたものですが、この見事なカデンツァによって作品の価値はさらに高められました。カデンツァの後は変イ音(ラ♭)のユニゾンによって力強く曲が閉じられます。

(Y.H)

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