小山清茂は1914年、旧更級郡信里村(現 長野市篠ノ井村山)に生まれました。この後のプログラムに登場する伊福部昭と共に今年2014年が生誕100周年にあたります。小山は西洋音楽とはほぼ縁のない山村で育ちますが、長野県の教員を務める傍らで作曲の勉強を始めました。日本民謡や祭り囃子などをモティーフにした親しみやすい作品からは、彼の素朴であたたかい人柄が感じられます。代表作「管弦楽のための木挽歌」は、かつて小学校学習指導要領に入っていたため、ご存知の方も多いことでしょう。
この作品は、故郷に伝わる年中行事「もぐら追い」をモティーフに作曲されました。作曲者自身による解説がありますので、引用させて頂きます。
<CD「小山清茂/吹奏楽のための大神楽」(財団法人日本伝統文化振興財団)曲目解説より引用> |
桶のふちを天秤棒でこする「キュー、キュー」という音は、弦楽器で弦の駒よりもテールピース側(普段弾くのとは反対側)を弾くのに加え、「固いセルロイドの筆箱のふたでガラス板をこする」という、あまり想像したくない響きで表現されます。「もぐら追い」という行事自体は日本各地に伝わっていますが、桶のふちを天秤棒でこするということは、他の地方では一般的ではないようで、作曲者の郷里周辺に特有の音風景であったのかもしれません。
現在、もぐら追いの行事は県内でもごく限られた地域で行なわれているのみとなっているそうです。実際この行事を知る人は今では少ないかもしれませんが、古き佳き田舎の音風景が感じられる、貴重な作品であると言えます。
(Y.H)