サマセットはイングランド南西部に位置する地域で、内陸部はなだらかな丘陵と牧草地が広がっています。サマセット狂詩曲は、この地域に伝わる民謡を採譜したセシル・シャープの勧めによって1906年に作曲され、ホルストはこの作品をシャープに献呈しました。
サマセット狂詩曲は4つの民謡を基に構成されています。冒頭はオーボエ・ダモーレによる『羊の毛刈りの歌』(民謡3)。次に行進曲風の『南部ドイツ』(民謡4)と、寂しげな『恋人との永遠の別れ』(民謡5)。再び『南部ドイツ』がサクソフォン、テューバも加わった管楽器セクションにより勇壮に奏でられた後、『カッコウ』(民謡6)、『恋人との永遠の別れ』がトゥッティで奏されます。この旋律が繰り返されて孤独な雰囲気に支配されると、『羊の毛刈りの歌』がオーボエ・ダモーレに回帰し、静寂へと消えていきます。
ホルストはこれら民謡の歌詞を元に、この曲のストーリーについて次のように記したといいます。「静かな田園地方、羊の毛刈りの歌が聞こえる。若い男が少女に求婚し、しかし自分が軍隊に入ることを説き伏せて戦争に行った。男は戦死し、遠い世界へと逝ってしまった。そしてまた羊の毛刈りの歌が聞こえてくる。」
民謡3 羊の毛刈りの歌(Sheep-Shearing Song)
民謡4 南部ドイツ(High Germany)
民謡5 恋人との永遠の別れ(The True Lover's Farewell)
民謡6 カッコウ(The Cuckoo)
(Y.H)