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過去の演奏会

ドヴォルジャーク/交響曲第8番 ト長調

Antonín Leopold Dvořák (1841-1904)
Ⅷ. Symfonie G dur, Op.88
Ⅰ Allegro con brio
Ⅱ Adagio
Ⅲ Allegretto grazioso
Ⅳ Allegro, ma non troppo

チェコの国民的作曲家ドヴォルジャークは、プラハ近郊の村で宿屋兼肉屋の長男として生まれました。幼い頃から音楽に興味と才能を示した彼は、貧しさに負けずに努力を重ねて才能を開花させ、やがてブラームスに認められたのをきっかけに、国際的な名声を得るまでに至りました。

彼の作風は、基本的には西欧の伝統的な様式に則りながら、溢れるような旋律と生き生きとしたリズムを盛り込み、独自の構成で曲を組み立てるものです。こうした特徴は、祖国の民族音楽や自然によって育まれた極めてボヘミア的な感性に基づいていますが、同じチェコの国民的作曲家スメタナが標題的な音楽に傾倒したのに対し、ドヴォルジャークの場合には、交響曲をはじめとする絶対音楽を重視しました。

1885年、作曲家として円熟期を迎えたドヴォルジャークは、経済的にも安定し、ボヘミアの避暑地ヴィソカーに別荘を建てました。以後、このお気に入りの場所で多くの名作が生み出されることになります。交響曲第8番もそのうちの1曲で、1889年の8月から11月にかけて、一気に書き上げられました。この曲は翌年2月2日にプラハのルドルフィヌムで、作曲者自身の指揮と国民劇場の管弦楽団により初演されて大成功を収めています。

当時ドヴォルジャークはそれまで自作の出版を任せていたジムロックとの間に軋轢が生じており、この交響曲はイギリスのノヴェロ社から出版しました。そのために「イギリス」という愛称で呼ばれることがありますが、曲の内容はイギリスとは一切関係なく、むしろドヴォルジャークの作品の中でも最もボヘミア色の強い作品と言えます。ドヴォルジャーク自身がこの曲について「新しい方式で案出された個性的な楽想を持つ、他の交響曲とは違った作品」と述べているように、この曲の特徴は、一見すると伝統的な交響曲の形式の中に、ボヘミアの自然と農村での生活を思わせる民俗色の強い楽想を盛り込み、その民俗色が曲の構成にも影響している点にあります。

第1楽章はソナタ形式ですが、ト長調であるにも関わらず、いきなりト短調の第1主題から始まるなど、独自の構成をとった充実した楽章です。

第2楽章は直接的にボヘミアの自然と農村風景を思い起こさせ、深い情緒にあふれるものです。ドヴォルジャークならではの緩徐楽章で、この交響曲中で最良の楽章と評価されることもあります。

第3楽章はワルツ風の舞曲。感傷的で素朴な優美さに満ちた主部と、朴訥とした中間部の対比が印象的です。中間部の旋律は自作の歌劇「がんこ者たち」からの転用です。コーダは4分の2拍子になり、中間部の素材を用いています。唐突に盛り上がりあっという間に終わりますが、次の第4楽章への見事なつなぎとなっています。

第4楽章は変奏曲形式ですが、ソナタ形式風に組み立てられています。ブラームスの第4交響曲終楽章との類似が指摘されることもありますが、実際に聴いた印象はずいぶん異なり、ドヴォルジャークの個性が強く感じられます。冒頭のトランペットによるファンファーレの後、チェロによる主題を中心に変奏が繰り広げられますが、途中でトルコ行進曲風の楽想が織り込まれるなど、起伏に富んだ劇的な音楽です。最後はスラヴ系の交響曲に典型的な熱狂的盛り上がりで曲が閉じられます。

(T.M)

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