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過去の演奏会

シューベルト/交響曲第7番 ロ短調「未完成」

Franz Peter Schubert (1797-1828)
Symphonie Nr.7 h-moll (Unvollendete), D759
Ⅰ Allegro moderato
Ⅱ Andante con moto

シューベルトはウィーンで生まれ育った作曲家です。古典派からロマン派への移行期に活躍し、あらゆるジャンルにおいて優れた作品を残しましたが、特に歌曲の分野で残した功績は大きく、「歌曲の王」とも呼ばれています。また、大胆な和声は後の作曲家に大きな影響を与えました。

彼は7曲の完成した交響曲を残しましたが、そのほかに未完の交響曲を6曲残しています。そのうち最も重要な作品が、1822年に書かれた、一般に「未完成」と呼ばれるロ短調の交響曲です。かつては第8番として親しまれていましたが、近年では旧第7番のホ長調(D729)が番外とされたため、繰り上がって第7番とされることが多くなりました。番外とされたD729を含め、他の未完の交響曲はシューベルトの残したままの状態では演奏不可能なのに対し、この「未完成」は、第2楽章までは完成して演奏可能となっています。これら2つの楽章があまりに美しく、完璧な構成を持つことから、未完成であるにも関わらず、シューベルトの交響曲中だけでなく、古今東西のクラシック音楽の中でも屈指の名曲として親しまれています。

この交響曲は、第3楽章のスケルツォのスケッチが残されていることから、もともとは通常の4楽章形式で構想されたことはほぼ間違いないと考えられます。シューベルトが作品を未完成のまま放置すること自体は珍しくはなかったのですが、この曲の場合には、若干事情が異なります。第2楽章までのスコアは、後続楽章が未完成であるにも関わらず、シュタイアーマルク音楽協会の名誉会員に迎えられたことの返礼として、その会長であり、友人でもあったヒュッテンブレンナーに送られているのです。曲自体の不思議な魅力に加えて、このような少々不可解な事実もあることから、未完成となった理由について、いくつかの推測がされていますが、真相は明らかになっていません。

第1楽章冒頭の、チェロとコントラバスによる地の底から響いてくるような序奏の最初の2小節、し-ど#-れ(H-Cis-D)が、2つの楽章全体を統一する基本動機となっています。ソナタ形式の第1楽章、二部形式(展開部のないソナタ形式)の第2楽章ともに、流れるような美しい旋律の中に基本動機が埋め込まれており、展開部においてはこの基本動機の繰り返しが劇的な緊張を高める働きもしています。また、三度近親の関係が重視される独特の転調や、そもそも交響曲史上初となるロ短調という調性の選択などにも、シューベルトならではの独創性がうかがえます。交響曲としては不完全な形ながら、残された2つの楽章だけでも、演奏会のメインを飾るに足る傑作であると言って間違いないでしょう。

(T.M)

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