コルンゴルトは、ウィーンで活躍した後にアメリカ合衆国に移住した20世紀の作曲家です。幼い頃から神童として認められ、数々の作品を発表しました。中でも1920年に初演された歌劇「死の都」は大成功を収め、世界的名声を得ます。その後ナチスによる迫害を逃れるため亡命した米国では、ほぼ映画音楽を専門に手掛け、「ロビン・フッドの冒険」(1938年)でアカデミー賞作曲賞を受賞するなど、大きな功績を残しました。第二次大戦後、彼は純音楽の作曲に戻り、ヴァイオリン協奏曲(1947年)や交響曲嬰ヘ調(1950年)などの作品を書きますが、当時映画音楽は一段低く見られていたため、「映画音楽に魂を売った作曲家」というレッテルを貼られ、失意のうちに亡くなりました。
コルンゴルトの作風は、マーラーやリヒャルト・シュトラウスから受け継いだ後期ロマン派のきらびやかなオーケストレーションと、プッチーニを思わせる甘美な旋律が特徴ですが、映画音楽にもこうしたシンフォニックな様式をそのまま持ち込み、変革をもたらすとともに、以後の映画音楽作曲家たちに大きな影響を与えています。
本日演奏する「主題と変奏」は、1953年、スクールオーケストラを想定して書かれた作品です。「アイルランド民謡のように」という指示のあるアレグレットの主題は、愛らしく郷愁を誘うもので、それに7つの変奏が続きます。短いながらもロマンティックな魅力にあふれた佳曲です。
なお、この作品は本日の演奏が日本初演となります。
(T.M)