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過去の演奏会

小山 清茂/管弦楽のための「もぐら追い」

Kiyoshige Koyama (1914-2009)
《Moguraoi》 for Orchestra

この作品は、小山清重が故郷である旧更級郡信里村(現在の長野市篠ノ井村山)に伝わる年中行事「もぐら追い」をモティーフに作曲したものです。
曲についての説明は、作曲者自身による曲目解説を引用するのが最も適切でしょう。

作曲者の郷里長野県更級郡信里村に伝わる子供の遊びで、正月十五日の早朝行われる「鳥追い」という行事の直後に行われるものである。
こえたご(下肥を入れる桶)を庭に持ち出して、桶のふちを天秤棒でこすり乍ら、もぐら、へび、むかで等を追い払うまじないをやる。
まず譜例3(省略)の様に大声でわめき乍ら、杵か棒で地面を叩くと、待ちかまえていた片方の子供が桶と天秤棒でキュー、キューとやる。つまり、もぐら達が悲鳴をあげて逃げていくという寸法である。
これは、野性的であり、エネルギッシュでもあって、農村の子供たちの持つ生命力が良く現れた遊びであると思う。また、農作物や人間に害を与えるもぐらとか蛇とや百足を追い払う遊びは、いかにも農村の子供らしく微笑ましい。
なおこれはわらべ唄の一種だが、歌うのではなく、わめくのだから、リズムは有るが音程がないので、便宜上私が音程をつけて主題とした。

<CD「小山清茂/吹奏楽のための大神楽」(財団法人日本伝統文化振興財団)曲目解説より引用>

桶のふちを天秤でこする「キュー、キュー」という音は、弦楽器で弦の駒よりもテールピース側(普段弾くのとは反対側)を弾くのに加え、「固いセルロイドの筆箱のふたでガラス板をこする」という、あまり想像したくない響きで表現されます。「もぐら追い」という行事自体は日本各地に伝わっていますが、桶のふちを天秤棒でこするということは、他の地方では一般的ではないようで、作曲者の郷里周辺に特有の音風景であったのかもしれません。

なお、この曲には、次のとおり様々な版があります。

  • 歌曲(1958年)
  • 女声合唱(1968年出版、女声合唱のための三つのわらべ唄第3曲)
  • 室内楽版(1965年、Fl.Pf.2Vn.Va.Vc.:1970年改訂:1983年再改訂、ア ンサンブルのためのわらべ唄第4曲、2Fl.(あるいは1Fl.?)Perc.2Vn.Va.Vc.Cb)
  • 吹奏楽版(1970年)
  • 管弦楽版(1984年)

本日演奏する管弦楽版は、1984年7月13日に開催された「反核・日本の音楽家たち”オーケストラル・メッセージ'84”」のために書かれ、岩城宏之指揮新星日本交響楽団により初演されました。

管弦楽版が演奏されるのは、恐らく初演以来のことと思われます。本日使用するパート譜は、本年10月2日に予定されている信州新町イヤー「愛郷コンサート」で演奏するために、作曲者の自筆スコアから新たに作成したものです。「管弦楽のための信濃囃子」と同様、地元長野で生まれたこの作品を、今後も当団のレパートリーとして演奏し続けたいと考えています。

(T.M)

パート譜作成協力:楽譜作成工房「ひなあられ」

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