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過去の演奏会

チャイコフスキー/交響曲第5番 ホ短調

Peter Ilyich Tchaikovsky
Пётр Ильич Чайковский
(1840-93)
Symphony No.5 in E minor, Op.64
Симфония №5 ми минор, Op.64
Ⅰ Andante - Allegro con anima
Ⅱ Andante cantabile, con alcuna licenza
Ⅲ Valse. Allegro moderato
Ⅳ Finale.Andante maestoso - Allegro vivace(Alla breve)

チャイコフスキーは19世紀ロシアを代表する作曲家で、交響曲から室内楽や歌曲、さらにはバレエや歌劇まで、あらゆるジャンルに傑作を残しています。ロシア情緒に満ちた美しい旋律により、ロシア本国で国民的作曲家とみなされているだけでなく、世界中で人気を誇っています。かつては「通俗的」とされ、学術的な研究対象とはされていなかったこともありましたが、近年では再評価が進み、その作品の骨太な構造にも焦点が当てられています。

チャイコフスキーは全部で7曲の交響曲を完成させており、番号つきの6曲に加えて、「マンフレッド交響曲」と呼ばれる作品があります。このうち後期の番号つきの3曲、第4番から第6番までが圧倒的な人気を誇りますが、その中でも本日演奏する第5番は最も演奏頻度の高い作品となっています。

交響曲第5番は、1888年、交響曲第4番の完成から11年経って書かれました。同年11月にペテルブルクで作曲者自身の指揮により行われた初演では、聴衆からは大いに喝采を受けましたが、批評家からは非難されました。チャイコフスキー自身も、当初この曲は失敗作であるとみなしていました。当時彼のパトロンとして莫大な資金援助を行っていたフォン・メック夫人に宛てた手紙では、「あの曲のなかには、なにかイヤなものがあり、大げさに飾った色彩があり、拵えものの不誠実な混ざりものがあって、それが人々には本能的に感じられるのです。」と述べています。しかし後に名指揮者ニキッシュによる演奏をきっかけに、この曲は圧倒的な成功を収めるようになり、チャイコフスキーも自信を持つようになりました。

この曲は、循環形式で書かれ、冒頭に提示される主題が全曲にわたって用いられています。この主題が全楽章に現れるだけでなく、各楽章の主題は全て「運命の主題」と密接に関連し、統一感のある堅固な構成を持った作品となっています。

第1楽章の冒頭、序奏部でクラリネットで出る陰鬱な循環主題は、一般に「運命の主題」と呼ばれていますが、これは作曲者のノートにこの楽章の序奏の標題について「宿命の、あるいは、同じことであるが、神の摂理の不可解な定めの前での完全な拝跪」と書かれていることによります。同じく作曲者のノートによれば、クラリネットとファゴットで出る第1主題は「×××(伏字)に対する、不平、疑念、苦情、非難。」、弦楽器による甘美な第2主題は「信仰の抱擁に身を任せるべきではないか???」となっています。

第2楽章はチャイコフスキーならではのメランコリックな旋律が連綿と流れる緩徐楽章。途中で「運命の主題」が不吉に鳴り響きます。

第3楽章は通常のスケルツォの代わりにワルツが置かれている点が独特です。おとぎ話の世界のような雰囲気ですが、最後にはまた「運命の主題」が顔を出します。

第4楽章はまず序奏部で「運命の主題」が長調で格調高く奏でられ、いったん静まった後、ティンパニとコントラバスの持続低音により主部が導かれます。第1主題は弦楽器による激烈なもので、いくつかの推移主題を経て現れる第2主題は、低音楽器のリズムに乗った木管楽器による流れるような旋律。これらの主題に基づく展開と再現部の盛り上がりの後、全休止を経て、コーダでは「運命の主題」が輝かしい凱歌のように高らかに奏でられ、最後には変形された第1楽章第1主題が力強く現れて全曲が閉じられます。

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