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ボロディン/音画「中央アジアの草原にて」

Александр Порфирьевич Бородин
Alexander Porfir’evich Borodin (1833-1887)
В средней Азии
Dans les steppe de l'Asie centrale

ボロディンは19世紀後半に活躍したロシア国民楽派の作曲家で、「五人組」の一人として知られています。本業は作曲家というよりもむしろ化学者で、化学の分野でも重要な業績を残しています。本人も「日曜作曲家」と自称しており、残された作品は多くありませんが、それらは音楽史に残る傑作ばかりとなっています。

ボロディンの音楽の特徴としては、ロシア的要素に加えて、東洋趣味が挙げられます。東洋趣味はロシア国民楽派に共通する特徴なのですが、中でもボロディンの東洋的な響きへの傾倒はひときわ目立ちます。彼はトルコ系民族を祖先に持つグルジア貴族の私生児として生まれており、アジアの血が濃いせいもあるのでしょう。彼は古今東西の作曲家の中でも屈指のメロディー・メーカーですが、その名旋律にはオリエンタルな抑揚を持つものが多くなっています。

本日演奏する「中央アジアの草原にて」は、1880年、ロシア皇帝アレクサンドル2世の即位25周年を記念して作曲されました。同年4月8日、サンクト・ペテルブルクにてリムスキー=コルサコフ指揮により初演され、リストに献呈されています。曲の内容については、初演チラシに掲載されたボロディン自身によるプログラム・ノートを引用するのが最も適切でしょう。

中央アジアの単調な砂漠の静寂の中、最初に、平和なロシア民謡の旋律が聞こえる。遠くから馬やらくだが近付いて来て、東洋的な旋律の哀愁に満ちた響きが聞こえる。果てしない草原の彼方から、ロシアの兵隊に守られて、隊商が姿を現す。隊商は征服者の強力な軍事力の保護を受け、不安もなく、安全にその長い旅を歩み続ける。それはゆっくりと姿を消して行く。征服者と征服されたものたちの静かな歌が和声の中に溶け合い、隊商が遠くに消えていっても、そのこだまがいつまでも残っている。

(森田稔訳、ドイツ・グラモフォン「ボロディン管弦楽曲集」解説より再引用)

まさに音画(音楽による絵画)といえるわかりやすい描写に加えて、2つの主要旋律の美しさがとても印象的です。これら2つの旋律は、それぞれロシア的、東洋的というボロディンの音楽の2つの特徴をよく表していて、しかもクライマックスではそれら2つの名旋律が同時に鳴り響くという点で、一度耳にしたら忘れることのできない名曲です。

なお、この曲の原題は音画「中央アジアにて」となっています。

(T.M)

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