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過去の演奏会

シベリウス/交響曲第2番 ニ長調

Jean Sibelius (1865-1957)
Symphony No.2 in D major Op.43
Ⅰ Allegretto
Ⅱ Tempo andante, ma rubato
Ⅲ Vivacissimo - (atacca:)
Ⅳ Finale: Allegro moderato

シベリウスの作品中でも特別な人気を誇るこの交響曲は、1901年初めから5月までのイタリアのラパッロ滞在中に書き進められ、帰国後いったん中断した後、1901年末から1902年の初めに仕上げられました。初演は1902年3月8日ヘルシンキにおいて、作曲者自身の指揮により行われ、大成功を収めました。曲はカルペラン男爵に献呈されています。

この曲を書くきっかけとなったイタリア旅行は、チャイコフスキーやリヒャルト・シュトラウスのイタリア滞在が彼らにもたらした素晴らしい影響を念頭に、カルペラン男爵がシベリウスに強く勧め、金持ちのパトロンから費用を集めて実現したものでした。ラパッロでシベリウスは家族のためにペンションを、自分の仕事場として近郊の小さな山荘を借り、そこで作曲を始めます。当初のスケッチの段階では4つの楽章からなる交響詩を着想しますが、筆を進めるうちに構想は変化し、この交響曲第2番となりました。

この作品は、シベリウスの交響曲としては比較的暖色系の響きを持ちますが、それには南欧の温暖な気候と自然が影響を与えていることは否定できないでしょう。同時に、イタリア到着前に立ち寄ったベルリンでリストの「ダンテ交響曲」を聴いたことや、滞在中に訪れたフィレンツェやローマでキリスト教にちなむ事物に触れたことも、一定の影響を与えています。また、国民主義的雰囲気を色濃く残すこの作品ですが、オーケストレーションの点では、第1番よりも古典的な編成を取り、テクスチュアも軽くなり透明感を増していますし、それでいて楽器の組み合わせ、音量バランス等により多彩な響きを実現していることや、主題の有機的つながりや隙のない堅固な構造など、後の作品を予告する特徴も既に見受けられます。

第1楽章は柔和な表情をもって始まりますが、構造的には全曲中でも最も精緻に組み立てられています。各主題は有機的なつながりを持ち、曲の各部のつながりも、縫い目がわからないほど自然です。第2楽章は一転して寒々とした雰囲気で始まります。シベリウスはラパッロの山荘の庭で、ドン・ファンと石の客の幻想、つまり自分が石の客(=死)を迎え入れるドン・ファンであるという幻想を抱き、そこからこの楽章の第1主題を着想しました。低弦のピチカートに乗ってファゴットで吹かれる主題は、容易に石の客とその足取りを連想させます。いったん高揚した後、曲想は急変して第2主題が弦楽器により静謐に奏でられますが、この部分には作曲時のスケッチに「キリスト」という文字が書かれています。第3楽章はロシア国民楽派的雰囲気を残したスケルツォ。牧歌的なトリオが2回現れ、2回目は次の第4楽章へとつながるブリッジの役割を果たしているのが特徴です。第3楽章から続けて切れ目なく演奏される第4楽章は、圧倒的に高らかに歌い上げられるコーダの盛り上がりが強烈で、国民楽派的フィナーレという印象を残すものですが、冷静にみると、全体としては、感情の爆発的な高揚そのものよりは、むしろそこに向けて計算された構造の見事さが特筆されます。

(T.M)

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