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過去の演奏会

G.フォーレ/「マスクとベルガマスク」組曲

Gabriel Fauré (1845-1924)
Masques et bergamasques, Suite pour Orchestre, Op.112
Ⅰ 序曲 Ouverture
Ⅱ メヌエット Menuet
Ⅲ ガヴォット Gavotte
Ⅳ パストラーレ Pastorale

フォーレは19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家です。彼の音楽は、当時のサロンで人気を得ましたが、単に上品で洗練されているだけではなく、特に中期から晩年にかけての作品は、宗教的・精神的とも評される深い叙情を特徴としています。

「マスクとベルガマスク」は、1919年2月から3月にかけて書かれた音楽喜劇です。モナコ皇太子アルベール一世から、フォーレの師であり親友でもあったサン=サーンスを介して委嘱され、脚本はコメディア・デラルテ(イタリアの仮面喜劇)を題材に、ルネ・フォーショワが書きました。「マスクとベルガマスク」というタイトルは、ヴェルレーヌの詩「月の光」の一節から取られています。

ヴェルレーヌの詩「月の光」は、18世紀の画家ワトーによる雅宴画からインスピレーションを得ています。雅宴画とは、ルイ王朝の貴族が催した「雅なる宴」あるいは「艶なる宴」などと呼ばれる野外の宴を題材としたものです。「雅なる宴」では、貴族たちはコメディア・デラルテに登場するピエロやアルルカン、コロンヴィーヌといったキャラクターの仮装をして、歌や踊り、飲食に興じました。そういった光景が、ワトーをはじめとするロココ時代の画家たちの流行の題材となり、さらには雅宴画を通じて、19世紀の詩人たちの題材ともなったわけです。ちなみにフォーレは1887年にヴェルレーヌの「月の光」よる同名の歌曲を書いており、この舞台音楽にも転用しています(ただし組曲には含まれていません。)

舞台音楽は全部で8曲からなりますが、新たに書き下ろされたのは1曲のみであり、残りは以前に書かれた作品の転用です。本日演奏する組曲は、この中からフォーレ自身が4曲を抜粋したものです。

第1曲「序曲」は、1869年にピアノ連弾曲として書かれた「交響的間奏曲」(作品番号なし)を改作したもので、管弦楽のための組曲(交響曲)作品20(1873年)のフィナーレとしても使われています。冒頭の第1主題はいかにも喜劇らしく軽快で、第2主題はメロディーメーカーとしてのフォーレの資質が良く現れた流麗なものです。

第2曲「メヌエット」は、1869年の同名のピアノ曲の改作と推定されています。木管楽器を中心とした典雅な響きは、「雅なる宴」の世界を彷彿とさせます。

第3曲「ガヴォット」も1869年の同名のピアノ曲をオーケストラ用に編曲したもので、「序曲」と同じく、管弦楽組曲作品20の第3楽章にも使われています。格調高い主部とたおやかなトリオが対比されていますが、トリオでは主部の主題の変形が顔を出し、コミカルな雰囲気も演出しています。

第4曲「パストラル」は、唯一の書き下ろし作品だけあって、晩年のフォーレの特徴がよく現れており、全曲中の白眉となっています。絶妙な和声の移ろい、澄み切った響きなど、天国的な美しさを湛えた音楽です。

(T.M)

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