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A.P.ボロディン/交響曲第2番 ロ短調

Александр Порфирьевич Бородин
Alexander Porfir’evich Borodin (1833-1887)
Deuxième Symphonie si mineur
Symphony No.2 in b minor
Ⅰ Allegro
Ⅱ Prestissimo-Trio: Allegretto
Ⅲ Andante
Ⅳ Finale: Allegro

ボロディンは19世紀後半に活躍したロシア国民楽派の作曲家で、「五人組」の一人として知られています。本業は作曲家というよりもむしろ化学者で、化学の分野でも重要な業績を残しています。本人も「日曜作曲家」と自称しており、残された作品は多くありませんが、それらは音楽史に残る傑作ばかりとなっています。

ボロディンの音楽の特長としては、ロシア的要素に加えて、東洋趣味が挙げられます。実は東洋趣味はロシア国民楽派に共通する特徴なのですが、中でもボロディンの東洋的な響きへの傾倒はひときわ目立ちます。彼はトルコ系民族を祖先に持つグルジアの貴族の私生児として生まれており、アジアの血が濃いせいもあるのでしょう。彼は古今東西の作曲家の中でも屈指のメロディー・メーカーですが、その名旋律の多くはオリエンタルな抑揚を持っています。また、ほかの国民楽派の作曲家が苦手とした(あるいは興味がなかった)大規模な作品を論理的に構成することについても、ボロディンは例外的に優れた感覚を持っていました。

交響曲第2番は、1869年、第1番の初演成功後間もなく書き始められ、彼の代表作のひとつである歌劇「イーゴリ公」と並行して作曲されました。したがって両者には共通する雰囲気が感じられ、五人組のスポークスマン的存在だった批評家スターソフが第2交響曲を「勇士」と名づけたのもうなずけます。また、ボロディン自身はこの曲について「第3楽章のアンダンテではスラヴ人の吟遊詩人(バヤン)の歌を復活させ、第1楽章では古いロシアの王侯が集会しており、フィナーレでは騎士たちの楽しい饗宴の中から、グースリ(ロシアの民族楽器)と竹笛の音が聞こえてくる」と語ったと伝えられています。

第1楽章の第1主題は、冒頭の弦楽器による荒々しく力強いモティーフ(X)とそれに続く木管楽器の活発なモティーフ(Y)からなります。Xは楽章を通じて形を変えて何度も繰り返され、短い旋律を変化させながら繰り返して語るように歌うブイリーナ(英雄叙事詩:ロシア民謡の代表的なジャンル)のスタイルを思わせます。第2主題は対照的に息の長い叙情的な旋律ですが、この主題にはYと共通するリズムが含まれ、さらに展開部では変形されてXと融合するような形で現れて、実は第1主題と第2主題には密接なつながりがあることが明らかになります。また、続く3つの楽章にはいずれもこの第2主題と関係のある旋律が現れ、交響曲全体を通しての統一も図られています。

第2楽章はおとぎ話のような雰囲気を持った、いわゆる「妖精系」のスケルツォです。スケルツォはボロディンが最も得意とした形式で、この楽章も非常に素晴らしいものになっています。主部では妖精が跳びまわり、スペイン風のトリオでは優雅な異国のお姫様が登場します。

第3楽章は極めて美しい緩徐楽章。グースリを模倣するハープの伴奏に乗って、ホルンのソロが息の長い旋律を連綿と歌います。

第4楽章は前の楽章から切れ目なくつながります。ロシアの交響曲に特有の祝祭的フィナーレで、賑やかに全曲を締めくくります。

(T.M)

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