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過去の演奏会

メンデルスゾーン/交響曲第1番 ハ短調

Felix Mendelssohn Bartholdy (1809-1947)
Sinfonie Nr.1 c-moll, Op.11
Ⅰ Allegro di molto
Ⅱ Andante
Ⅲ Minuetto. Allegro molto-Trio
Ⅳ Allegro con fuoco

この交響曲は1924年、メンデルスゾーンが15歳のときの作品です。これだけでも驚きですが、実はメンデルスゾーンはこれより前に、歌劇を含むあらゆるジャンルの作品をいくつも完成させており、弦楽のための交響曲も12曲書いています(そのほかに未完成1曲もあり)。したがって本日演奏する交響曲第1番は、メンデルスゾーンが完成させた13番目の交響曲であり、自筆の草稿にも「交響曲第13番」と書かれていました。しかし、19世紀後半にブライトコップフ社がメンデルスゾーンの作品全集を刊行した際には、12曲の弦楽交響曲は習作的なものとして無視され、この作品が「第1番」とされて今日に至っています。

12曲の弦楽交響曲は非常に完成度の高いもので、とても習作として切り捨てることはできないクオリティを持っていますが、交響曲第1番は、それらの総仕上げであると同時に、それまで私的な場での演奏を前提として作曲していたのに対し、初めて本格的な演奏会を意識して作曲したと推測されることから、メンデルスゾーンが本格的な作曲家として踏み出した新たな1歩とも言えるでしょう。実際に、1927年2月1日にライプツィヒで行われた初演は好意的に迎えられましたし、2年後の1929年5月25日のロンドンでの演奏はセンセーショナルな成功を収め、メンデルスゾーンの名は世界的に知られてゆきます。

この交響曲は、古典的で均整の取れた形式の中から若いメンデルスゾーンの情熱が溢れ出るような作品です。随所にハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、そしてウェーバーといった作曲家からの影響が見られますが、新鮮な和声や、第2楽章や第3楽章トリオで聴かれる深い情感など、メンデルスゾーンならではの語法も既に聞かれます。

第1楽章はメンデルスゾーンの情熱的な側面が強く出た音楽です。序奏がなく冒頭から第1主題が提示されますが、いきなりハイテンションで、しかもアウフタクトもなく始まるあたりに若いメンデルスゾーンの心意気が感じられます。第2楽章は一転して深い「大人の」情感を漂わせる音楽です。第3楽章はメヌエットとされていますが、四分の六拍子で、スケルツォ的な要素も持っています。トリオは弦楽器のアルペジオの上で木管が息の長い旋律を奏でる幻想的なもの。第4楽章は再び激しい情熱が前面に出ますが、展開部にはほとんどバロック音楽のようなフーガが置かれ、情熱と理性が絶妙なバランスを保ったメンデルスゾーン独特の世界が展開されます。

なお、第3楽章のメヌエットは、1929年のロンドンでの演奏の際に、メンデルスゾーン自身により、自ら編曲した弦楽八重奏曲のスケルツォに差し替えられ、その後しばらくはその形で演奏されることも多かったようですが、現在ではオリジナルのメヌエットが演奏されるのが普通になっています。

(T.M)

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