今年没後10年を迎えるルトスワフスキは、ポーランドを代表する20世紀の作曲家です。民俗的な素材に基づく語法から出発し、独特の半音階主義や「管理された偶然性」という概念に基づく新たな手法を取り入れ、20世紀後半の音楽界で独自の地位を占めました。
1952年に書かれた弦楽合奏のための「5つの民謡」は、ピアノ独奏のための「民謡集」(1945年)から抜粋して編曲されたものです。12曲からなる「民謡集」の旋律は、いずれもジェルジ・オルジェフスキが採集した民謡のコレクションに基づいており、ルトスワフスキはその中から第1、2、10、11、12曲を選んで弦楽合奏用に編曲しています。
第二次大戦直後、長い他国の抑圧から解放されたポーランドでは、芸術家の興味は当然ながら自国の民族的素材に向いており、「民謡集」もその流れの中にありました。しかし1947年以降のスターリニズムの時代にあっては、いわゆる「社会主義リアリズム」というスローガンの下で自由な創作活動が抑圧され、芸術家は「民族的」であることを強制されるようになります。この苦しい時代にルトスワフスキは劇場、ラジオ放送、映画や学校用の作品など、彼自身が「機能的音楽」と呼んだ実用音楽を書いて家族を養っていますが、「民謡集」の弦楽合奏用編曲もそうした仕事の一環であり、非常に皮肉なものを感じます。
第1曲「ああ、あたしのヤシエンコ」はウォヴィチ地方の歌、第2曲「やあ!おれはクラクフから来たんだ」は古都クラクフに伝わる歌、第3曲「木立」、第4曲「雄がちょう」、第5曲「校長先生」はいずれもシレジア地方の舞曲です。ルトスワフスキは民謡の旋律に半音階的な伴奏をつけており、素朴ながらも印象的な小品集となっています。
(T.M)