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過去の演奏会

J.ハイドン/交響曲第104番 ニ長調 Hob.Ⅰ:104「ロンドン」

Franz Joseph Haydn (1732-1809)
Symphonie Nr.104 in D-dur, Hob.Ⅰ:104 'London'
Ⅰ Allegro con brio
Ⅱ Andante
Ⅲ Menuet. Allegro
Ⅳ Finale. Spiritoso

ハイドンは長年にわたって現在のハンガリーのエステルハージ公爵家の楽長を務めていました。1790年に君主ニコラウス・エステルハージ候が亡くなると、後を継いだアントン候は音楽に興味を示さず、楽団は解散されますが、ハイドンには年金が支給されると共に自由な音楽活動が許され、生活の本拠はエステルハージ宮からウィーンへと移ります。

そんなハイドンのもとにいくつか仕事の話が舞い込みますが、最も彼の興味を惹いたのは、ドイツ出身のヴァイオリン奏者で、ロンドンで興行師としても活躍していたヨハン・ペーター・ザロモンによるロンドンへの招聘でした。ハイドンはザロモンの招きに応じ、1791~1792年と1794~1795年の2回にわたりロンドンに滞在し、それぞれ6曲ずつ、合計12曲の交響曲を作曲し、自ら指揮して初演します。これが「ロンドン交響曲集」あるいは「ザロモン交響曲集」として知られている、第93番から第104番まで交響曲です。

ロンドンのオーケストラはエステルハージ家のものとは比べ物にならないほど大規模で充実しており、また聴衆の反応がリアルタイムではね返ってくることもあり、ハイドンは工夫を凝らして充実した作品を生み出しました。ハイドンはその後も約8年間作曲を続けますが、再び交響曲を書くことはなく、その結果、「ロンドン交響曲集」はハイドンの交響曲創作の最後を飾り、同時に古典派交響曲の頂点をも成す傑作群となっています。

本日演奏する第104番は、1795年3月に完成し、同年5月4日にキングズ劇場で開かれた慈善演奏会で初演されました。「ロンドン」あるいは「ザロモン」というタイトルは19世紀に入ってから広まったもので、根拠があるわけではありませんが、「ロンドン交響曲集」、そしてハイドンの全交響曲の最後を飾り、親しみやすいメロディーと緻密な構成でひときわ輝くこの曲を特に「ロンドン」と呼びたくなるのは、うなずけます。

第1楽章は威厳に満ちた序奏の後、流れるような第1主題が提示されます。第1主題には後で出てくる多くの主題の基となる要素が含まれていますから、注意して聴いてみてください。第2楽章はハイドンらしい変奏の要素を含む緩徐楽章で、主題の可愛らしさと突然爆発する激しい感情の対比が強烈な印象を与えます。第3楽章は速いメヌエットで、ハイドンの茶目っ気が存分に発揮されています。トリオは対照的に滑らかな動きのレントラー風の音楽。第4楽章の主題はクロアチア民謡に基づいていると言われ、バグパイプのようなドローン・バスがなんともいえない味を出しています。

(T.M)

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