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カウエル「賛美歌とフーガ風の調べ 第16番」の日本初演に寄せて

ソノーレは、近・現代の作品にも目を向けて、レパートリーの拡大に努めています。私にとっても、BtoC(バッハからケージへ)という発想の中から浮かんだ一人がヘンリー・カウエルです。

カウエルというアメリカの作曲家、作品としては「ペルシア・セット」や「オスティナート・ピアニッシモ」などが有名ですが、御存知でない方がほとんどでしょう。

1930年代はアメリカ独自の音楽への意識が高まった時期でした。カウエルは32年にアメリカで初めての民族音楽の講義を行っています。そんな彼の興味は師シェーンベルグの影響を受けつつ、ガムラン音楽、米独立戦争時代の賛美歌、イラン音楽等広範なものに及んでいます。実験音楽の分野で言及されることの多いカウエルですが、世界各地域での様々なルーツを持つ音楽文化への視野を持った音楽家だと思います。

また、アメリカにおける打楽器主義の確立者でもある彼に影響を受けたのがジョン・ケージで、彼はカウエルのいくつかの曲の初演の際に指揮者を務めていますし、啓示を受け打楽器の曲を書くようにもなりました。二人と一緒に仕事をしていた仲間の一人がルー・ハリソンで、私はこの人がカウエルの後継者だと考えていますが、交友関係そのままに私が知るようになった彼らの音楽は、いわゆるクラシック音楽の伝統の継続と同時に段差を感じさせ、アメリカ発の新しい世界を感じさせます。

今回、幸いなことに彼らの中の最年長者であるカウエルの作品を取り上げることが出来、合わせて日本初演の名誉を得たことは、彼らの音楽を愛する私にとってもとてもうれしいことです。米独立戦争時の開放感あふれる気分といったものを感じています。カウエルに拍手を!

(H.K)

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