プーランクは20世紀前半のフランスを代表する作曲家で、フランス六人組(プーランク、ミヨー、オネゲル、オーリック、タイユフェル、デュレ)の一人として知られています。前の世代であるワーグナーなどのもやもやとした曖昧な音楽への反動から、はっきりとした旋律を持つ、明快な音楽を目指していました。
プーランクは「修道士」と「悪童」という2つの顔を持つと言われるように、カトリックの教義に根ざした宗教音楽と、いかにもパリっ子らしい、洒落て機知に富んだ音楽とを平行して書いています。
本日演奏する「2つの行進曲と間奏曲」は、1937年にパリで開催された万国博覧会における晩餐会の食卓音楽として、英国BBC放送からの依頼により書かれたものです。このときの晩餐会ではオーリックにも作曲が依頼されましたが(レモン・シャーベットの音楽とコーヒーの音楽)、プーランクの作品は、第1曲「行進曲 1889」がパイナップル、第2曲「田園風間奏曲」がチーズを食べるときに演奏され、第3曲「行進曲 1937」で晩餐会はお開きになったそうです。
第1曲の軽やかさ、第2曲の官能性、第3曲の皮肉っぽい表情など、洗練された都会的な魅力に溢れた作品で、プーランクの「悪童」としての側面が強く出た音楽となっています。批評家アンリ・エルは、この作品を評して「ちょっとした小品、だが真の音楽。こんなところに我らがプーランクは秀でている。」と書いています。
(T.M)