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過去の演奏会

G.フォーレ/劇付随音楽「ペレアスとメリザンド」組曲 Op.80

Gabriel Fauré (1845-1924)
Pelléas et Mélisande, Suite, Op.80
Ⅰ 前奏曲 Prélude
Ⅱ 糸を紡ぐ女 La Fileuse
Ⅲ シシリエンヌ Sicilienne
Ⅳ メリザンドの死 Mort de Mélisande

この作品は、近代フランスを代表する作曲家フォーレが、「青い鳥」でおなじみのベルギーの作家メーテルリンクの同名の戯曲の英語版のための劇付随音楽として書いたものです。

戯曲のあらすじは「王子ゴローは狩で迷い込んだ森で、正体不明の美女メリザンドに会う。ゴローはメリザンドを妻として城へ連れ帰る。城にはゴローの異父弟であるペレアスがいて、メリザンドは彼と愛し合うようになる。2人の関係を知り嫉妬に駆られたゴローは、ペレアスを刺し殺してしまう。そのとき妊娠していたメリザンドは、子を産んだ後、ペレアスの後を追うように死んでいく。」というもので、象徴性に富んだ独特の雰囲気を持っています。この戯曲は多くの作曲家の興味を惹き、フォーレのほか、ドビュッシー、シベリウス、シェーンベルクといった作曲家がこの戯曲を題材に曲を書いています。

1898年4月、女優のパトリック・キャンベル夫人は、自らがメリザンド役を演じる「ペレアスとメリザンド」の英語版によるロンドン初演のために、フォーレに付随音楽の作曲を依頼します。この依頼を受けたフォーレは、1ヶ月ほどの間に19曲の小品を作曲しましたが、当時多忙であったため、オーケストレーションは弟子の作曲家シャルル・ケクランに委ね、ケクランの編曲にフォーレが指示を加える、という形で進められました。1898年6月21日に行われた初演は大成功を収め、フォーレの音楽もメーテルリンクの戯曲と深く結びついていると称賛されています。

本日演奏する組曲は、オリジナル版の主要曲を演奏会用にまとめ直したものですが、管弦楽編成をオリジナル版の室内オーケストラから通常の2管編成に拡大するなど、フォーレ自身が手を加えています。組曲版の初演は、1901年2月3日に、ラムルー演奏協会のコンサートで、カミーユ・シュヴィヤールの指揮によって行われました。現在ではほとんどがこの組曲の形で演奏されています。

第1曲「前奏曲」は戯曲では幕の上がる前に演奏されます。冒頭の弦楽器による旋律はメリザンドのはかない美しさを暗示しています。続いて弦楽器の伴奏に乗ってフルート、ファゴット、チェロで奏でられる第2主題は、峻厳な雰囲気を持ち、悲劇的な運命を予告しています。再びメリザンドの主題が現れた後、狩をするゴローを表すホルンの音が聞こえてきます。

第2曲「糸を紡ぐ女」は、メリザンドが糸を紡ぐ第3幕第1場の前奏曲として演奏されます。糸車を模した弦楽器の動きに乗って、オーボエが息の長い優しい旋律を歌いますが、この旋律は第1曲のメリザンドの主題から派生したものです。2つめの主題は短調の厳かなものですが、これは第4曲「メリザンドの死」の主題を思い起こさせるものであり、ここでもメリザンドの悲劇的な運命が予感させられます。

第3曲「シシリエンヌ」は、第2幕第1場、ペレアスとメリザンドが庭園の泉のほとりで戯れる場面で使用されます。シシリエンヌ(シチリアーナ)はシチリア島に起源を持つ8分の6拍子の舞曲です。この曲は現在ではフォーレの代表的な管弦楽曲として知られていますが、もともとは劇付随音楽『町人貴族』の中の1曲としてチェロとピアノのために書かれたもので、しかも、この曲のオーケストレーションについては、フォーレはケクランの編曲に満足したため、自身では一切手を加えていません。

第4曲「メリザンドの死」は、第5幕への前奏曲として演奏され、メリザンドの死を予告する葬送行進曲となっています。葬送の重い足取りを思わせる複付点のリズムが印象的です。

(T.M)

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