オーケストラ・ソノーレ長野 公式ホームページ

過去の演奏会

L.V.ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 Op.92

Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Symphonie Nr.7 A-dur, Op.92
Ⅰ Poco sostenuto – Vivace
Ⅱ Allegretto
Ⅲ Presto
Ⅳ Allegro con brio

1911年から1912年にかけて作曲されたこの交響曲は、ヴァーグナーが「舞踏の聖化」、リストが「リズムの神化」と呼んでいるほど、強烈なリズムが印象的な音楽です。このリズムへのこだわりはどこから生まれてきたのでしょうか。

1808年、「傑作の森」と呼ばれる実り多い時期の総決算として、ベートーヴェンは交響曲第5番(「運命」)と交響曲第6番「田園」を完成させます。この時期までのベートーヴェンは、徹底した動機展開により曲を構成することを目指していました。曲を分解していくと「動機」という最小単位になるのですが、ある「動機」を定めたら、それを徹底的に積み上げて1つの曲(楽章)を組み立ててゆくのです。それによって、曲の統一感、推進力、そして「小さな種子がこんなに大きく育った」という充実感が生まれます。こうした構成法の頂点を極めたのが交響曲第5番と第6番であり、ほとんど「じゃじゃじゃじゃーん」という音形だけで成り立っている交響曲第5番の第1楽章などはその究極の例です。

ところが、こうした構成法では、音楽にとって本来の魅力であるはずの旋律性が犠牲になってしまいます。細かな動機を積み重ねたのでは、幅の広い豊かな旋律は生まれるはずがありません。徹底した動機展開を極めたベートーヴェンは、その反動として、息の長い、歌うような旋律を前面に打ち出します。しかし、こうしたカンタービレな旋律だけでは、せっかく動機展開で獲得した 曲の統一感、推進力といったものが犠牲になってしまいます。

このジレンマに対するベートーヴェンが見つけた回答のひとつ、それがこの交響曲第7番で用いられている「リズム動機法」なのです。各楽章に固有のリズム動機が、流れるような旋律を支え、曲を統一するための要素として大きな役割を果たしています。その結果、幅広い旋律と力強い推進力、確固とした構成感の両立が実現し、聴くものを興奮させずにはおかない素晴らしい音楽が生まれました。

第1楽章は特徴的な付点リズムで統一され、延々と続くそのリズムに頭も体も麻痺しそうになります。長大で充実した序奏がいているのも特徴です。第2楽章は当時「不滅のアレグレット」と呼ばれ、ベートーヴェンの作品中でも美しさという点では群を抜いています。第3楽章は超快速のスケルツォで、トリオの主題はオーストリアの巡礼の歌を引用したものであるとも言われています。第4楽章は狂喜乱舞のリズムの饗宴。恐らくアイルランド民謡を土台に作られた第1主題は、激しい輪舞を連想させます。この主題とベートーヴェンお得意の上昇・下降音階とが入り乱れるコーダは、まさに半狂乱、興奮のるつぼです。

(T.M)

Copyright (C) 2013 - Orchestra Sonore Nagano.
All Rights Reserved.

inserted by FC2 system