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過去の演奏会

グレツキ/古い様式による3つの小品(弦楽オーケストラのための)

Henryk Mikołaj Górecki (1933- )
Trzy utwory w dawnym stylu na orkiestrę smyczkową
Three pieces in old style


グレツキは現代ポーランドを代表する作曲家です。何年か前に「悲歌のシンフォニー」が大ヒットして、現在の「癒し系」音楽ブームの先鞭を切りました。若い頃はとても前衛的な音楽を書いていましたが、60年代半ばからは、ポーランドの民謡や古い宗教音楽などを取り込みながら、切り詰められたシンプルな音楽を書くようになっています。

今回演奏する『古い様式による3つの小品』は、ちょうど彼の作風の転換期にあたる1963年に書かれました。中世ポーランドの音楽の研究の結果として生まれたこの作品には、その後のグレツキの方向性が既に明確に打ち出されています。全曲を通じてオスティナートや持続音[注]が多用されているのも特徴です。

第1曲は緊張感と深い情感を湛えたあまりに美しい音楽。霧の中にたたずむ中世ポーランドの街並みが思い浮かびます。教会の鐘の音を模した響きも印象的です。第2曲は一転して生命力溢れる民俗的な舞曲。オスティナートの伴奏が興奮を誘います。第3曲はこの作品の白眉で、中世ポーランドの宗教的な旋律に基づきます。はじめは第1曲に通じる雰囲気を持つコラール風の美しい音楽で始まり、2パートに分割されたヴィオラの上声部に定旋律が出ますが、フォルティッシモとなる中間部からは、その定旋律がファースト・ヴァイオリンの上声部とチェロの下声部によりオクターヴで奏され、その間の全音階上の音を全て埋めるように、他のパートが平行進行します(次頁の図を参照〔音名は固定ドで表記〕)。縦のラインでご覧いただくと、1オクターヴ内の全音階上の全ての音が、常に同時に鳴っているのがわかると思います(このコントラバスはひたすら「れ」のオルゲルプンクト[注])。ピアノでいうと、白い鍵盤を両手でぐしゃーっと鳴らした状態ですね。このような密集した和音をトーン・クラスターといい、20世紀音楽の代表的な手法のひとつです。なかなか衝撃的な響きがしますから、ご期待ください。

VnⅠ-1  :  れ → ら → そ → ど → し → ら → し → し
VnⅠ-2  :  ど → そ → ふぁ→ し → ら → そ → ら → ら
VnⅡ-1  :  し → ふぁ→ み → ら → そ → ふぁ→ そ → そ
VnⅡ-2  :  ら → み → れ → そ → ふぁ→ み → ふぁ→ ふぁ
Va1  :  そ → れ → ど → ふぁ→ み → れ → み → み
Va2  :  ふぁ→ ど → し → み → れ → ど → れ → れ
Vc1  :  み → し → ら → れ → ど → し → ど → ど
Vc2  :  れ → ら → そ → ど → し → ら → し → し

[注] “オスティナート”とは同じ音形を繰り返すこと。同じ音を伸ばし続ける“持続音”も広義のオスティナート。また、バスの持続音を“オルゲルプンクト”という。

(T.M)

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