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L.V. ベートーヴェン/交響曲第1番 ハ長調 Op.21

Ludwig van Beethoven (1770-1827)
Symphonie Nr.1 C-dur, Op.21
Ⅰ Adagio molto - Allegro con brio
Ⅱ Andante cantabile con moto
Ⅲ Menuetto:Allegro molto e vivace
Ⅳ Adagio - Allegro molto e vivace

ベートーヴェンがこの交響曲を書いたのは1799年から1800年にかけてで、彼が29歳のときです。ベートーヴェンはこの作品以前にも、ハ短調(1791~93年)とハ長調(1795~96年)の2つの交響曲のスケッチを残していますが、これらは結局完成されませんでした(後者の第1楽章の主題は交響曲第1番の第4楽章に転用されています)。このようにベートーヴェンがかなり早い時期から交響曲を書こうとしていたにも関わらず、第1番の完成、発表が30歳近くまでずれ込んだのは、初期には「序曲」としての従属的な機能が主だった交響曲が、彼の時代には独立したジャンル、さらには最高の器楽形式として認識されるようになったこと、またモーツァルトやハイドンが書いた後期の傑作に匹敵する作品を目指した、という2つの理由で、交響曲の発表にはとりわけ慎重であったためとも考えられています。実際に、この作品においては、基本的な点ではハイドンやモーツァルトの影響がかなりうかがえるものの、同時に彼らとは一線を画し、後の作曲家に影響を与えた新たな方向性も現れていて、確かにベートーヴェンが満を持して発表したものと言えるでしょう。

第1楽章で注目されるのは序奏です。いきなり下属調の属七の和音で始まるという開始自体も大胆ですが、続く一連の和声的工夫により緊張感を高め、そのまま主部に突入するように設計されていることも重要です。こうした主部を必然的に導き出すような有機的なつながりを持つ序奏は、モーツァルトやハイドンの交響曲での、主部から独立し、それとの対比に重点を置いたものとは全く異なる意味を持っています。

第2楽章は室内楽的な書法が目立つ軽快なもので、いわゆる緩徐楽章とは異なる性格を持っています。繊細な部分もありますが、付点リズムの多用による躍動感が特徴で、このようなリズム要素は後の交響曲第7番へのつながりすら感じさせるものです。茶目っ気のある終わり方も密かな聴き所です。

第3楽章は「メヌエット」と表示されていますが、実質的には既に痛快なスケルツォとなっています。トリオは牧歌的なのになぜかヴァイオリンだけ相変わらず忙しかったりします(ヴァイオリンのみなさんお疲れさま)。

第4楽章も序奏が(短いながらも)面白く、♪そ~♪そらし~♪そらしど~♪そらしどれ…といった感じで、いたずらっ子が人の様子をうかがうように、徐々に音階上行の到達点を上げていき、オクターヴに達すると同時に主部が始まります。主部では音階が上昇と下降の両方向で駆け巡り、思いきりエネルギーを発散させます。最後はいかにもベートーヴェンらしく、終止形をしつこいくらい繰り返して終わります。

(T.M)

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