ハイドンは晩年に2回にわたりイギリスに滞在し、それぞれ6曲ずつの新作交響曲を発表しました。これがいわゆるザロモン交響曲集あるいはロンドン交響曲集と呼ばれている作品群です。第101番ニ長調は2回目のイギリス行きのために1793年にウィーンで書き始められ、1794年に完成、初演されました。「時計」という愛称はハイドン自身によるものではありませんが、第2楽章の規則正しい伴奏リズムに由来していて、なるほどと思わされます。
この親しみやすい愛称のお陰もあり、この曲はハイドンの交響曲の中でも特に有名になっていますが、内容的にもまさに傑作の名にふさわしい、充実したものです。限られた素材を様々に展開する手法や、拍子抜けするような突然のフェルマータや全休止、予想もつかない急激な場面転換など、ユーモア混じりの(指揮者によれば、第2楽章終わり近くのクライマックスで、強迫観念のような時計の針音が大音響で鳴り響くところなどは、「かなりたちの悪い冗談」とのことですが)すばらしいアイデアがたっぷり詰まっていて、究極のハイドン・ワールドと言えるのではないでしょうか。もちろん技術的にはとても大変な曲なので、例によってお客様をはらはらさせてしまうかもしれませんが、私たちの感じているハイドン・ワールドの楽しさを客席の皆様にお伝えできるような演奏をしたいと思っています。
(T.M)