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J.S.バッハ/カンタータ第82番「私は満ち足りている」BWV82

Johann Sebastian Bach (1685-1750)
Cantata 'Ich habe genug' BWV 82
Ⅰ Aria: Ich habe genug
Ⅱ Recitativo: Ich habe genug
Ⅲ Aria: Schlummert ein, ihr matten Augen
Ⅳ Recitativo: Mein Gott! wenn kömmt das schöne: Nun!
Ⅴ Aria: Ich freue mich auf meinen Tod

このカンタータはもともとは1727年の「マリアの潔めの祝日」(2月2日)のために書かれたもので、独唱、オーボエと弦四部+通奏低音という編成をとっています。最初はアルト/メゾソプラノ用として構想された後、バス用(ハ短調)として完成しました。その後もバッハは何度か改訂し、ソプラノ(ホ短調)やアルト/メゾソプラノ用(ハ短調)の版も作っています(最終稿はバス用)。また、第2曲のレチタティーヴォと第3曲のアリアは「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」にも記入されました。

作者不詳の歌詞は、「主に会うまでは死なないだろう」という予言を受けたシメオン老人が、幼子イエスを胸に抱き、心満たされて死を待ち望む、という福音書の物語(ルカ伝第2章)を導入に、「信仰における、死への甘美にして熱烈な憧憬」(礒山雅)を歌ったものです。

第1曲のアリアはバッハの書いた音楽の中でも屈指の美しさを持つもので、マタイ受難曲の有名なアルトのアリア「憐れみ給え、神よ」と共通するモチーフが使われています。第2曲のレシタティーヴォでは「さあこの人と一緒に進もうではないか!」という部分で通奏低音と独唱がカノン(輪唱)となり、追従して歩くという歌詞の内容が象徴的に表現されています。第3曲は安らかな来世へ誘う「子守歌」の部分と確固として現世との決別を歌う中間部との対比が印象的です。第5曲のアリアは激しい舞曲調の曲で、狂おしいまでの死への期待が感じられます。

キリスト教を知らない者にはこの曲の歌詞の世界を完全に理解することは困難ですが、バッハの素晴らしい音楽を通じて、キリスト教信仰の一端に触れることができるのではないでしょうか。

(T.M)

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